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火事という事が起こる時、そこには何らかの火元があります。
それが何なのか、いつ何時生じるのか判らないので、断熱材は不燃材を選択すべきだというのが私の考えです。
さて、何らかの火元になり得る1つに、電線の寿命、があるのですが、
電線の寿命が火元になり得る事をご存知でしょうか?
日本電線工業会の技術資料107号
電気設備の知識と技術
えっ!?
と思いませんか?屋内で、強い紫外線が当たるわけでもなく、それなのに、です。詳しい劣化のメカニズムは、
公益社団法人、日本電気技術者協会
にて解説されていますので参考にしてください。
少々難解な所がありますが、とにかく室内の電線と言えど劣化していく事は知られている現象だという事です。
奇しくも2016年10月12日、東電の送電線ケーブル(埼玉県)が敷設35年目で火災を起こし、大きなニュースになりました。これは都市送電線ケーブルでの事故例ですが、家庭用の電力線でも同様のトラブル(火災)が起き得るという事です。
しかし、どう考えてもそれ以上の長期間、電力線の交換工事(リフォーム工事)を1度もせずに居住し続けているご家庭は多い事でしょう。
今から家を建てるほとんどの方は、30年後に電線の寿命が心配でリフォームするなんて、まず考えた事が無いと思います。
・・・
さて、参考例として我が家の電力線の配線状況を見てみたいと思います。
写真:電力線の配線状況
積水ハウスはいわゆる現代住宅なので、石膏ボードの裏側に電力線を全て隠蔽してしまいます。一応、鞘管も通してくれているので、30年後に電線だけ交換する劣化更新は可能かもしれません。(結束帯を併用していたら無理ですが・・・)
隠蔽配線は、およそ何処のビルダーでも同じ仕様だと思います。
鞘管の有無は、ビルダーによって違うと思います。
鞘管がどの程度傷んでいくのかは、検索しても情報はありませんでした。
ただ30年も時間が建つと床、クロス、照明、その他什器などだいぶ痛みが進んでいる筈なので、現実的には電力線だけでなく、全面リフォームを考える事になりそうです。
内装を丸ごとやり替えるのは大工事です。一時的な引っ越しも必要でしょう。仮住まいの費用も必要です。なかなか大変な予算計上が必要だと予想できます。
さて、ここで問題なのは、、、今から家を建てる計画をしている人の予算計画の中に、30年後の全面リフォームを前提とした資金を織り込んで計算をしている人がどれだけ居るでしょうか??
基本的に子供が家の外に旅立つものと考えた時、老後というのは、その時ある住居資産を出来うる限り長く使い続けると思います。
(働き手となる子供が家に同居してくれるなら全く別の話だと思いますが。)
つまり電線が劣化していたとしても、漏電を起こしてから、煙を吹いてから、ようやく修理をするという状況にある可能性が十分あり得ると思うんです。
永久に使える電線というのはありません。使い続ける内にトラブルを起こすのは明白です。それが30年後か60年後かは判りませんが、いつか必ず起こる、日に日に火災発生確率が増す、大地震のようなものだと思います。
■隠蔽配線は意匠性の代償
今から30年くらい前に建った家や、またはそれ以上昔の家は、石膏ボードを貼っておらず、おそらく見える柱にコンセントが付いていて、電力線ケーブルは柱の表面や、内装の壁に露出し、天井か床に潜っていくか、壁や天井面を這って分電盤に至るような配線が良くあると思います。見た目は悪いかもしれませんが、実はメンテナンス性は良かったんですね。電線が劣化した結果、焼け焦げが生じたとしても生活空間の中なので容易に発見できます。意匠性の代償が現代住宅にはあるという事です。では内装の表面に電力線を出すか?と言われると、うーん、と考え込んでしまい、結局は隠蔽配線を選んでしまうでしょう。
電線劣化のリスクは避けたくても避けられないのです。
■そもそも今から建てる人はリフォームの経験が少ない
今から住宅建築を考える世代の人達が育った実家が、
・賃貸の戸建て
・賃貸の集合住宅
であった場合、そもそもリフォーム工事は大家さんの監督範囲であって、居住者は電線の寿命なんて意識する筈がありません。大家さんだって意識しません。大家さんは内装が古くなってきたら借り手がつかなくなるので、リフォームする結果として、コンセントや電線も新しい物に変わる、という無意識の仕組みです。では、
・親世代の持つ戸建て
・親世代の持つマンション
であった場合はどうでしょう。
およそリフォームというのは、計画時点から先の未来の為に行なうものなので、
今から建てようとしている人が、リフォーム工事を見たことがあるとすれば、
読者のあなたが成長する前の子供の頃ではないでしょうか。
■私自身の経験
そろそろ四十路突入が迫ってきた私の実家は、約30年前にリフォームしています。そう、私が子供の時です。知人の経験談でも、子供の頃実家をリフォームしたという話は多々耳に入ります。
■自分の家がリフォームした時、断熱材は入っていたか?
その中でも、結構な確率で、現場発泡ウレタン、が使われています。近年よく普及している可燃性断熱材の代表格だと思います。
■なぜ現場発泡ウレタンがウケるのか?
近年、売上を伸ばしているビルダー「桧家住宅」も現場発泡ウレタンを売りにしています。知名度の低い地方密着ビルダーでも、現場発泡ウレタン、を使う所は多々見られます。
それは何故か?
→ 現場発泡ウレタンは、容易に気密を実現できる
からです。(燃えるけど)
悪い家の代名詞である「寒い」の原因は、断熱性云々以前に隙間風と底冷えです。入居1年目の施主を満足させる為には、「暖かい」を実現しなければ、口コミが良くなりません。
例えば、私が積水ハウスと相見積もりを取った地方ビルダー(硬質発泡ウレタン採用)営業マンのネガティブキャンペーンは「鉄は寒い」でした。イライラしましたが、その営業マンはそういう口上で過去沢山の契約を実現したのでしょう。それだけ「寒い」という言葉は訴求力があるという事です。
正直なところ、積水ハウスに住んでみて、実際寒い部分もあるんですが、予め考えていた回避策(ガス暖房)が大当たりして快適に暮らせている事と、なぜ寒い仕様を一部残しているのか、という事は別記事で書く予定です。
■20年後、可燃性断熱材と配線劣化が社会問題化するのでは
これは予言になりますが、ガラスウール、ロックウール、硬質ウレタンフォーム、現場発泡ウレタン、フェノールフォーム、セルロースファイバー、等々ある断熱材の中で、不燃材はガラスウール、ロックウール、だけです。
電線の寿命で起こる火種は、ボヤを起こす程度のものですが、周辺に可燃物があれば火災に繋がるであろう事は明らかでしょう。
省エネだ、断熱だ、と言われた結果として使われた大量の可燃性断熱材は、20年後くらいから除々に、その問題を表面化させるのではないかと思います。
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