2020年2月29日土曜日

建築過程、先行工事

最近、勤務先の後輩から持ち家の事を尋ねられた事がありました。
「うちは積水ハウスで建てたよ」と言うと、
「積水いいですねー、今住んでる賃貸の近くで建ってるんですよ」
と返って来たので、ブランドイメージは良いと思いましたし、遂に我が家の担当営業マンを知人に紹介する時が来たのかも、なんて思って楽しみにしていました。

しかし直後のタイミングで積水ハウス本社の内紛が再燃して大きく報道されてしまい、それっきり後輩から積水ハウスの話は出てこなくなりました。
まぁそれが理由かどうか判りませんが、もし自分が建築計画しているタイミングで、五反田の事件が起こっていたら、果たして積水ハウスに決めていただろうか、そもそも展示場に足を運んだだろうか、と考えると心象的には敬遠するかもしれないな、と思いました。

そんなこんなで少しガッカリしながら、昔の写真を見直していたところ、当時の現場は結構しっかりやってくれていたんだな、と感じる事がありました。
積水ハウス本社の内紛は、どういう展開になるかわかりませんし、どうなったとしても今後の積水ハウスがさらに発展していってくれないと、オーナーとしては困った事です。

そういう思いから、当時の建築過程の事を記事に書いておこうと思い立ちました。
4年前の事ですが、積水ハウスの現場の事を詳しく記事に残しておけば、これから積水ハウスで検討する可能性がある人が読んでくれるかもしれないし、少し安心してくれるかもしれません。

1オーナーとして、まぁこういう形で積水ハウスを応援してみたいと思う次第です。

というわけで、まずは、先行工事から書いて行きたいと思います。


4年前、年明け早々、更地の建築地、向こう側は崖で、樹木がありました。


樹木の下の崖(擁壁)の状態、腹み出しあり、亀裂あり、ボロボロでした。


まず樹木の撤去から。人が樹上作業で伐採しています。ショベルカーにワイヤーを繋いで引っ張りながら支えて安全確保していました。


伐採完了、すっきりした更地になりました。


ビフォーアフター、隣家の擁壁を残し、既存の擁壁を撤去しました。


崖下の高さは2m。崖下斜面の角度は45度以下(安息角以下)を確認しています。
また、擁壁は高さ2mまでは建造時に構造計算不要。それ以上になると構造計算が必要になる為、別途料金が発生するルールになっているとの事でした。後から知りましたが、構造計算費用の相場は50万円くらいなんだとか。建築費を安くするポイントの1つだったようです。


崖下に「捨てコン」を流してレベルを出した所です。これから配筋します。


コンパネを立てて鉄筋を組み、底部スラブ用の生コンを流し込んだ所です。
手前側に不思議なアーチが数本植えられていますが、これは後で作業用に使う物です。


コンパネの背面はしっかり支えられていました。


内側のコンパネを立て、先ほど植えてあったアーチを使って支えています。


擁壁の厚みは150mm(?確認忘れ)くらいでしょうか。話によると「一番良い仕様の一体物擁壁」という事でした。ちなみに積水ハウス以外の在来木造ビルダーでも建築計画の見積もりは取りましたが、他社はブロック積みの計画でした。



流し込み施工の3日後、1つ事件がありました。
40年に1度と言われる大寒波が襲来。近所ではあちこち水道管が破裂し断水が起こっていました。これは我が家の建築史上、最大の事件であろうと思います。
当時のウェザーニュース
3日後の記録的寒波襲来は盛んに報道されており、流し込み当日には判っている事でした。法律では打設後5日間は2度を下回らないように管理する事となっているので、「強行された」と感じてしまい、ずっとトラウマ気味だったのですが、4年経って写真を見直すと、少し違う感じ方が生まれました。
脱枠後の擁壁立ち上がり部
打設後の雨水と積雪後の融雪水でビチャビチャ
写真のように、打設前の降雨、寒波襲来時の積雪と融雪、により足元は水浸しになりました。もし打設を寒波後に延期していたら、コンパネの型枠の中は水浸しになっていたでしょう。

コンクリートの打ち継ぎ面に水が溜まった状態で施工するのはご法度ですから、型枠を外して水抜き乾燥させる必要があるでしょう。しかし工事現場は土石で汚れるものですから、表面の掃除をしても再び綺麗にはならないでしょう。

つまり当時の時間軸は最悪で、
 打設を実行すれば3日後に凍害の危険はあるが、発熱で乗り切れるかもしれない。
 打設を延期すれば打ち継ぎ面に欠陥が入りやすくなる危険が高い。
やってもやらなくても、どちらも地獄、という状況だったのかもしれません。

上記は4年経った今写真を見返して感じた想像です。

しかし当時、現場監督からは「打設した報告」はあったものの、どういう判断だったのかという説明が無かった為、カチンと来てしまいました。
また、法律の文を読む限り、
 建築物に対する規制であって小規模擁壁が該当するのか怪しい
 硬化を促進するための特別な措置(早強セメント配合)を取っていれば良い
があり、これは基準に適合している可能性も残っていました。当時はギリギリの事をされてしまったんだ、と感じてしまい尚更イライラしていました。

コンクリート擁壁の強度が低下していないかと本当に心配で、怒りの矛先は現場監督に向かいましたが、打設してしまった後なので怒っても状況が好転する訳でなく、ただ鬱屈とした思いが溜まっていました。ですが4年経った今思うと、現場監督は一生懸命やってくれていたのかなとも思います。対応策としてシュミットハンマー測定を提案して来ました。

このようにきちんと写真も撮って、動画も撮って渡してくれました。

ただ、当時シュミットハンマーについて調べた限りでは、いまいち信頼性が感じられなかった為、言い訳用の道具という印象がぬぐえませんでした。

ですが、このように写真も撮って測定値も知らせてくれていたので、今思うと現場監督の彼は言葉が足りなかっただけなのかもしれません。このような事件を経て完成した立派な土留め擁壁がこちらです。
崖側からview
写真では表現しきれませんが、鏡面反射が起こるような非常に緻密な良く締まったコンクリートでした。
敷地側からview
リアルタイムで危機が進行していた当時、たぶん私は半分ノイローゼで、気持ちに余裕がなく疑いの目を持ちました。疑いの目を持ってしまうと、人間の視野はすごく狭くなるのだと思います。
現場はその時に実行可能な最も良い方法で行動をするのだと思いますし、そう信じないといけないと、今は少し反省しています。

また、技術者という人種はだいたい真面目です。寡黙でトークに機転が利かないし、相手の気持ちを推し量る事は苦手でしょう。技術者という人種は真面目であるほどそういうものだと思います。

トークの機転が利くのは営業マンであり、技術者である現場監督と緊密に情報交換をして、必要なタイミングで必要な説明が発信されるようにするものです。実際、我が家担当の営業マンと現場監督と建築士さんらは、そういう調整していましたし、そういう能力が十分ありました。
しかしこの1件に関しては、何故かうまく行かなかったのだなぁ、と思います。

今考えると、最悪の場合は再施工の必要が生じた筈です。それは建築計画における利益をマイナスにする規模の工事になっていたでしょうから、私だけでなく関係者全員がピリピリしていたのではないかと思います。施工業者の立場としては余計な発言は控えるでしょうから、私の立場から見れば危機感が薄く感じられてしまい、うまく話が繋がらなかったのではないか、と今はそう思えます。

工事は人間がやる事だから、全てパーフェクトに行く事は難しいのかもしれません。
だからこそ、家作りは相性の良い営業マンとの出会いが重要だと思いますが、今回のように極めて稀なハザードが生じた場合は、互いの立場からすれ違いが起こるのかもしれません。

今回の歴史的大寒波のような出来事は滅多にない筈ですが、仮にこのような危機的状況が生じた場合、施主がリーダーシップを取って対策会議を開いて議論を促し、技術的見解をまとめて、コンセンサスを形成するべきだと思います。業者に一任できるのは定常運行の時と考えた方が良いと思います。もっとも危機的状況なんて滅多にない事の筈ですから。

ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回は、地盤補強について書こうと思います。

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